<めっきについて>
 簡潔に言いますと、金属や樹脂などの非金属の表面に銅・ニッケル・クロム・金などの金属の密着性のある薄い皮膜を素材に施す技術です。

*薄い皮膜⇒皮膜の厚さは通常ミクロン[μ]単位で、1ミクロンは1,000分の1ミリです。分かりやすい例では、市販のアルミホイルの厚さは約10〜15ミクロン程度です。

装飾めっきの一例
 俗に「めっきが剥(は)げる」という言葉がありますが、まさしく少々荒れた素材や光沢のない暗い素材でもめっきすることにより、明るく・美しく変身させることができるのがめっきという表面処理技術なのです。

<めっきの種類>
めっきの目的 装飾性 素材外観を美化させる(色調、光沢性UP)
機能性 耐磨耗性、接着性など機能面の効果
防食性 素材を保護する(腐食から守る)
めっきの種類 電気めっき 電解溶液中で品物を陰極として通電し、表面にめっき金属を電気化学的に析出させるめっき法。厚付けが可能。
無電解めっき 溶液中で還元反応を利用して品物の表面に化学的にめっき金属を析出させるめっき法。膜厚分布が比較的均一
溶融めっき 亜鉛や錫、アルミなどの金属を溶融した中に品物を入れ、溶融した金属を付着させるめっき法
真空めっき(真空蒸着) 容器内を真空にして、金属や酸化物、窒化物などをガス化、またはイオン化して品物の表面に蒸着させるめっき法
(陽極酸化) 硫酸やシュウ酸などの電解溶液中で品物を陽極とし、通電して表面に酸化皮膜を生成させる。アルマイトとも呼ばれる
めっき処理方法 治具掛け 魚の骨の様な治具(ひっかけ)を使用してめっきする方法。ラックの形状やひっかけ方法は、色々なものがあります。対象製品は主に中〜大物。
バレル 円筒形の容器に品物を入れ、その容器を浴中で回転させながらめっきする方法で、小さな品物を大量にめっきできる利点があります。容器の仕様も色々なものがあります。
電気めっき治具の一例(画像左側)

治具を用いた電気めっきイメージ図(画像右側)

めっき治具〜解説〜

・製品の形状に応じて、治具を使い分けるので種類が必要。(接点形状や、枝の長さ、太さ、間隔・・・)

・電気が流れる(めっきが付く)のは、製品だけにする為、接点部外はコーティングをして絶縁(電気が流れない)様にしている。

・治具は製品の固定と通電の役割を持つ。


<色調> 弊社色調見本
 装飾めっきでは、めっきの種類・加工方法により、金属のもつ奥深い光沢感、穏やかなヘアライン仕上など、様々な色調を表現できますので、使用される周囲の雰囲気に合わせて選択することが可能です。また下地めっきをきちんと施せば耐食性も向上します。
大阪電鍍化学工業株式会社
<「銅」はなぜ銅色に見える?> 金属の色と言えば、おおよそ銀やアルミなどのシルバー系の色を想像されると思います。物体の色は可視光線(波長380nm〜770nm)がその物体で反射することにより見えます。銅の場合は、この可視光線の橙黄色より短い波長(紫〜青〜緑〜黄)を反射せずに多くを吸収してしまうので、主に反射される赤系の波長の光により、いわゆる銅色に見えます。また、アルミニウムは可視光の範囲でどの波長の範囲でも反射率が高いので、アルミ独特の銀白色となります。反射度合いは、表面の凸凹具合により変わってきますので、同じ素材でも表面状態(鏡面や梨地などの違い)により違いが生じます。

波長 短← 紫外線       赤外線 →波長 長

 可視光線は電磁波の一種です。ちなみに、可視光線の波長はナノの単位ですが、テレビやラジオの電波の波長は、メートルの単位です。(例えば、周波数1000kHzのラジオの電波では、波長は約300mです。)

 

<金属の特徴>

 ひとことに金属と言ってもそれぞれ性質に違いがあります。かなり大雑把になりますが、めっきで使用する金属でもニッケルめっきとクロムめっきでは一見同じシルバー色ですが、並べてみるとクロムが青っぽく、ニッケルが黄色っぽく見えます。また、耐食性面でもニッケルめっきのみでは、時間が経過するとくもりが生じますのでクリア塗装でめっき面を保護し光沢を保持します。しかしクロムめっきでは、通常の使用環境であればクリア塗装なしで長期間光沢を維持できます。(注:通常クロムめっきは、クロムめっきだけではなく下層に銅やニッケルめっきを施します。また、上記性能は下層めっきの厚さ等により違いはあります。)

 は電気伝導、熱伝導に銀に次いで優れており、調理器具でも昔から銅鍋として使われており、冷蔵庫などの冷媒管も大抵は銅製です。電線、プリント基板配線など熱、電気に関するところに多く使われています。その他、銅には、銀同様に殺菌性があるようで、他の金属よりも高い殺菌作用があるそうです。微量銅イオンを用いて池中のアオミドロ発生を防止する方法もあるらしく、観賞魚用の病気治療にも微量銅イオンが用いられた薬品があります。また、ナメクジも銅イオン(?)を嫌うらしく、ホームセンターなどでは銅を使ったなめくじ避け製品も売られています。

 アルミニウムは熱伝導において金の次ですが軽量で扱い易い為、放熱板をはじめ様々なところで利用されています。また、アルミニウムは地球表層部に含まれている元素の中で酸素、ケイ素に次いで3番目に多い元素とされています。しかし、天然の状態では金属の状態ではなく化合物として存在している為、アルミニウム金属としての利用は、ここ数百年前からのことです。今では、非常に有名な金属ですが銅や金に比べ意外と利用の歴史は浅いのです。リサイクルと言う点ではアルミは製造時に多量の電力を必要としますが、再生する場合はそれに比べ1/27程度のエネルギーですむそうです。

 ステンレスはステンレス鋼<Stainless Steel(さびにくい鋼)>の略称で、鉄を主成分としてクロムやニッケルを含有させた合金鋼です。「約12%以上のクロムを含有し耐食性を目的とした鋼」と定義されています。鋼種も色々ありますが、18-8(Cr18Ni8)ステンレス(SUS304)が広く知られています。ステンレス鋼は錆びないという訳ではなく、保護している表面の不動態皮膜という非常に薄い皮膜が破壊され、再形成できない状態になると錆びてしまいます。腐食する場合は、全面的より局所的に発生する場合が多いようです。また、海水などに含まれる塩化物にも弱いですが、腐食は海中よりも海水の飛沫がかかる風通しの良いところの方がより進行しやすいようです。表面処理という点では、特殊な前処理をすればめっきが可能ですが、耐食性面では、「耐食性=ステンレスの耐食性+めっきの耐食性」という足し算にはなりません。その他に、ステンレス自体の耐食性を向上させるための不動態化処理、また、電解研磨、電解発色などの加工もあります。

 銅・アルミ・ステンレスの素材が用いられている日用品で素材の性質をつかみやすいものに、鍋やフライパンなどの調理器具があります。銅の鍋は、熱伝導が非常に優れているので西洋料理や日本料理などのプロの厨房ではかかせません。一般家庭では肉厚が厚く重いので、次に熱伝導に優れ、軽量であるアルミ製の鍋や内面がコーティングされたフライパンが良く使われています。一方、ステンレス製の鍋は他に比べ熱伝導が悪く焦げ付きやすい欠点がありますが、最近は多層構造などにして、その欠点を補った製品が多くあります。ステンレスは、一般的なIHクッキングヒーターなどの電磁調理器へも対応が出来るメリットがあります。(具体的にお使いの際には対応可否をご確認ください。)また逆に熱伝導率の悪さを利用した、ステンレス製の魔法瓶も普及しています。

 また、余談となりますが毎日使う包丁も現在はステンレス製が主流でほとんど錆びず、手入れ(砥ぐ)をする習慣もあまりなく1,2本あれば十分ですが、切れ味の点では安来鋼に代表されるいわゆる鋼の包丁にはかないません。但し、ステンレス製に比べやや刃こぼれし易く、錆びやすいので、定期的な手入れが必要です。しかし主に魚をさばく為の包丁だけでも、出刃、柳刃(正夫)、ふぐ引き、タコ引き、あじ切り(小出刃)・・・などあり、安来鋼でも青紙、白紙・・・と種類があり、なかには「本焼き」と呼ばれる日本刀と同等の工程でつくられた最高級のものもあります。料理または刃物づくりに対するこだわり・繊細さを感じることが出来ます。

 器具素材の選定では家庭調理の分野では軽さやメンテナンスがし易いなどの取り扱い性、専門分野では機能性を重視したものとなっているのでしょうか。

 

 めっきをはじめとする金属表面処理は、

各金属の持つ短所を補い、長所を最大限に発揮出来るように、様々な分野で用いられています。


<装飾めっき> 〜歴史・特徴など〜
〜〜 めっきの歴史 〜〜 

 めっきの起源は、紀元前15000年、メソポタミア時代にメソポタミヤ北部のアッシリアで鉄器へのすずめっきが行われたという記録があり、中国では春秋戦国時代(紀元前770〜紀元前221年)にアマルガム法によって塗金が施されたそうです。前漢時代(紀元前206年〜9年)には優れた塗金の青銅器が現れました。また日本では古墳時代から奈良時代にかけてだと言われています。

 秦の始皇帝の時代とされる兵馬傭坑からクロムめっきされたと思われる剣が発見され、その青銅製の剣は約2200年を経てもほぼ完全な形をとどめていたそうです。クロムめっきが開発されたのは近代になってからで、当時どのような方法でめっきされたのかは不明です。

 日本における古代めっき技法については、水銀を塗布した面に金箔を押し付けて加熱する方法と金アマルガム(滅金)を用いる方法があったそうです。<−アマルガム鍍金−けしめっきともいい、水銀に金を融かして金アマルガムをつくり、これを塗布して加熱し水銀を蒸発させ金を固着させる方法。>

 日本の古代めっきについてまず思い浮かぶものといえば、東大寺の大仏であると思います。そのめっき技法については、伝えられていないこともたくさんあるのですが、『東大寺要録』にはめっきを施すために練金約146kg、水銀約820kgを使用したと記録されているそうです。また、塗金作業には約5年を要したそうです。

 かの有名な福沢諭吉の自伝の中では、若い頃にめっきを行なった(実験?)ことがあるという一節が見受けられます。

 バグダット電池と呼ばれるものが、イラクのバグダッド東方で、1932年にドイツの考古学者によって発見されました。それは約二千年前のバルチアン時代のパルチィア人のものと言われ、電池の構造は、土器の中に銅の円筒を置き、その中に鉄棒を固定して電解液を満たし開口部をアスファルトで封をしあり、電圧は0.8V程度であったと推測されています。その電池の使用目的は、装飾細工職人が指輪や首飾りなどに金・銀めっきを施す為に使ったのではないかと考えられています。

 現在では、水道の蛇口からパソコン・携帯電話などを構成する部品まで、色々なところにめっき技術は用いられており、「めっき」は生活に密着したものとなっています。

〜〜 ことばの由来 〜〜

 「めっき」という言葉の由来は、一説には…

塗金  滅金  鉱金  鍍金(めっき

…と変化したと言われており、”めっき”という言葉は外来語ではなく日本語なのです。

ちなみに英語では”Plating”です。

 一般的には「メッキ」とカタカナ表記の方が馴染みがあり、新聞などの記事でもカタカナ表記されていることが多いのですが、ことばの由来は漢字からですので「めっき」とひらがな表記の方が適しているということです。ご参考までに…。

 魚の鯵は「あじ」より「アジ」の方が馴染みあるようなものでしょうか…。

 ちなみに「メッキアジ」と呼ばれている種類の鯵(ロウニンアジ、ギンガメアジなどの幼魚)がいますが由来は「めっき」された様に容姿が銀ピカだから…と言う事らしいです、…となると表記は「めっきあじ(鍍金鯵!?)」が正しい??

〜〜 めっき雑学 〜〜

 「めっき」と「梅干し」編

 「梅干し」と言えば、皆さんご存知の思い出すだけで唾液がわいてくる、日本食にはお馴染みで、味覚的には一言で言えば「酸っぱい」ものです。

 梅干しを作る過程で、まず梅を塩漬けにするのですが、漬け込んでしばらくすると、いわゆる「梅酢」が上がってきます。この梅酢は「酢」と表現されるくらいに梅干し同様酸っぱく、成分としては塩分はもちろんクエン酸やリンゴ酸が含まれているそうです。試しに、自宅の梅酢をpH簡易測定器で測ってみると「pH2.4〜2.2」でした。pH7が中性ですので、それなりの酸性です。

 梅干しの歴史は古いものですが、当時は「梅干し」より「梅酢」の方が重要視されていたようです。その他調べてみますと、その梅酢は、なんと「めっき」する際にも用いられていたようで、大仏建立の際に施された金めっき時にも梅酢が使用されたそうです。今でも工芸的な銅の着色法の一つには着色材料の一つとして「梅干し1個、または梅酢」という記載があったりします。

 「めっき」と「梅干し」。なんの関連もないと思っていましたが、意外と接点があるものです・・・。探してみると、めっき以外でもなんら関係がないと思われるものも、どこかに思わぬ接点があったりするかもしれません。・・・こんな発見が「ものづくり」探求における、面白さの一つでしょうか?

       

天日干しするので「梅干し」 干さないものは「梅漬け」という区分らしいです。 赤じそを入れているので赤いですが、この液体が「梅酢」です。
 蛇足ですが、前述の伝統的金属染色技法では、脱脂(油分を除去する)工程で現在な様に化学系洗剤がない時代は大根おろしで磨いて脱脂していたと言うような記述もあります。・・・大根おろしには油分を除去する効果があるのか?・・・と思ったと同時に、だから脂の乗ったいわしや秋刀魚の塩焼きには、大根おろしが合うのかな?と思ったりもしますが、如何でしょうか?
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上記の正確な内容につきましては、各種文献等でご確認ください。
<参考図書>
社団法人日本化学会 『めっきとハイテク』 大日本図書X

丸山 清 『初級めっき』 日刊工業新聞社

全国鍍金工業組合連合会 『電気めっきガイド’95』

日本規格協会 『JISハンドブック 金属表面処理』

日本規格協会 『アルミニウムのおはなし』 小林藤次郎著

武島源二・梅尾良之 『電池のはなし』 日本実業出版社

青木 正喜 『電気工学概論』 実教出版